クローバーズリグレット

ソードアートオンラインオルタナティブ クローバーズリグレット 渡瀬草一郎 電撃文庫

☆☆☆☆☆☆
 数千人の被害を出したSAO事件。その最中にサービスを開始したVRMMOがある。その名は<アスカ・エンパイア>。和風をモチーフにしたそのゲームでは今<百八の怪異>という大きなイベントが開催されていた。プレイヤーの少女・ナユタもそのイベントに参加する一人だった。そんなナユタはある日フレンドのコヨミと共に不思議な法師ヤナギと出会う。彼はとあるクエストのクリアをこのゲーム内にいる「探偵」に依頼しにきたのだという……。不慣れなヤナギをその探偵の元まで連れて行ったナユタ達。しかし、ようやく見つけた探偵は、ステータスを「運」に全振りした奇妙な青年で──。



 『ソードアートオンライン』シリーズと世界観を同じとするスピンオフ作品『クローバーズリグレット』です。これはなかなか面白かったですね。老プレイヤーのヤナギの依頼を受けて、ナユタ、コヨミ、そして探偵のクレーヴェル達が謎のクエストのクリアを目指すお話。
 
 まず何といってもキャラクターが魅力的でしたね。物事に動じないナユタ、胡散臭くも知恵の働くクレーヴェル、二人とは真逆に直情的で喜怒哀楽の激しいコヨミ。その年齢ゆえかどこか落ち着きのあるヤナギを含めた4人の掛け合いが楽しかった。何というか派手さはないのだけど、読んでいてその情景がふと浮かぶような、そんなやり取りだったかと。個人的にはやっぱりナユタが好きかな。

 ストーリーはとある「クエスト」をクリアする事なのだけど、そのクエストの謎解きに加えて、VRというモノの性質やその未来等の話があったのが印象的でした。また、話が進むうちにSAO事件が落とした「影」を感じさせる展開もあったかと。特にとある人物については、読んでいて感じていた違和感の正体が判明した時に思わず「ああ、そういう事だったのか」となりました。同時に、思っていた以上に根が深かったんだなとも。
 
 後は……この話は色々と「SAO」本編(本のあらすじには書いてあるのだけど、具体的な事は一応伏せておきます)との繋がりを感じさせる物語だったのですが、自分はあらすじを見てなかったとこもあり結構新鮮な驚きをもって読んでました。こちらの展開も良かったですね。

 今回はこの辺で。凄く派手なアクションがあったり、勢いのある物語ではありませんが、ゆっくりと染みわたるような面白さがある、そんなお話だったかと。3巻まであるので、次も楽しみです。
 
 おまけ……渡瀬草一郎先生という事で当然のように登場する猫達の活躍(?)が楽しかったです(笑)。