天鏡のアルデラミン

天鏡のアルデラミン 宇野朴人 電撃文庫 2012年6月10日

☆☆☆☆☆☆
 隣国キオカ共和国と戦争状態にある大国・カトヴァーナ帝国。その帝国に一人の少年がいた。少年の名前はイクタ。元来なまけもので女好きの彼だったが、とある事情から帝国の高等士官試験を受験することになっていた。その原因でもあり腐れ縁の仲でもある少女ヤトリと共に、試験へと向かう送迎船に乗り込んだイクタだったが――。
 『神と奴隷の誕生構文』の宇野朴人先生によるシリーズモノ『天鏡のアルデラミン』です。これはなかなか面白かったですね。たまたま購入した作品だったのですが、買って良かったです。
 なんといっても登場人物たちが良かった。めんどくさがりの女好きだけど、ところどころでその才能の片鱗を見せるイクタ。名門の生まれで文武両道に優れて頼れる存在ヤトリ。ヤトリ同様に名門出身のトルゥエイなど、序盤からイクタと行動ともにすることになる仲間たちが皆魅力的でした。特にイクタとヤトリの信頼感を思わせる掛け合いが好きですね。あと個人的にはマシューがいい味だしていたかと。
 ストーリーそのものも面白かったですね。魅力的な登場人物たちの掛け合いや、次々に変化する状況が面白くて最後まで一気に読めました。特にイクタにとってはどれも望まないことばかりだけど、それでもなんだかんだで状況に応じて行動をとるのが素敵です。言動はひねくれてたり軽かったりするけれど、責任感が強いということかな。
 実は2巻までは読み終わっているのですが、面白かったので最新巻まで購入する予定です。楽しみ。
 印象に残った台詞(以下反転)――「前略―ぶっちゃけマシューとかほぼ巻き添えだな」「同感だわ―中略―それにしてもマシューは哀れね」「だからなんでそういう時だけ息が合うんだよ」――イクタ、ヤトリ、マシューの掛け合いです。もう完全にイジラレキャラになっているマシューに笑った。マシューは良くも悪くも人間くささがあって好きですね。