ミス・ファーブルの蟲ノ荒園2

ミス・ファーブルの蟲ノ荒園2 物草純平 電撃文庫 2013年12月10日

☆☆☆☆☆☆☆
 18世紀に突如現れた<蟲(ギヴル)>。彼らがもたらした被害と恩恵によって、大きく変貌した近代。ヨーロッパに流れついた侍・慧太郎は、そこで蟲を愛する少女・アンリと出会った。彼女とともに蟲が関わる事件を解決して一月。慧太郎は相変わらずアンリと同じ学園に「女装」して通っていた。級友のクロエ達と共に学園生活を送る慧太郎だったが、ある日「死神」と呼ばれる男と遭遇して――。
 侍の少年と蟲を愛する少女が活躍する『ミス・ファーブルの蟲ノ荒園』その2冊目です。今回もとても面白かったですね。前巻に比べると若干抑え目な印象も受けましたが、それでも十二分に楽しめました。
 序盤は楽しい学園生活といった感じですね。アンリをはじめ級友のクロエや謎の多い少女マルティナとの交流が面白かった。とくに皆で入る「お風呂」での出来事が楽しい楽しい。あと とあることから一緒に出かけることになった慧太郎とクロエに嫉妬してわたわたしているアンリが可愛かったですね(笑)。ニヤニヤです。
 「死神」と呼ばれる殺人犯と彼が求める「魔本」とかかわるストーリーも面白かったですね。相変わらず慧太郎は不器用だなぁ。目指したい理想があるのに、現実はいつも残酷で……彼がある人物に突き付けた「言葉」はなんとも痛々しくて、切なくて、言葉を紡ぐ慧太郎自身も傷ついているのが伝わってきてなかなかつらいものがありました。それでも逃げることを良しとしない慧太郎はやっぱり格好良かったですね。
 また今回はクロエとアンリの関係にかかわる話でもありましたね。読んでいて思ったのは、案外アンリも不器用だなということ。クロエに対してアンリが覚えていた確執の根っこはある意味彼女の「思い込み」なのだけど、そんなアンリの「思い込み」に踏み込んでいくクロエが良かった。慧太郎とのやり取りも好きだったけど、今回の事でクロエのことがより好きになりましたね。エピローグでのちょっと開き直った彼女も素敵です。
 あと個人的に敵側であるヴァレリオも良かった。その軽い口調とは裏腹に色々と苦い経験をしているようで、彼の心情が印象的でした。
 そんな感じで今回も最後まで楽しめました。慧太郎の目に宿った<蟲>のことや、謎の多いマルティナのことなど、色々と気になる部分もありこれからどんな展開を迎えるのか、続きが楽しみです。