グランクレスト・アデプト

グランクレスト・アデプト 夏希のたね

☆☆☆☆☆☆☆
 混沌(カオス)が全てを支配する大陸。そこでは君主たちよる戦乱が続いていた。その戦乱の中心で、その身に混沌を纏い異能の力を振るう傭兵――邪紋使い(アーティスト)たち。少年ロイもまた、そんな傭兵の一人だった。そんな彼の前に現れたのは超特大の混沌。それがどれほどの災厄をもたらすかと身構えたロイだったが、現れたのは一人の少女だった。この世界のことを何も知らない少女に、ロイは困惑するが……。
 『グランドクレスト戦記』と世界観を同じにするシェア作品『グランクレスト・アデプト』です。これはとても面白かったですね。先に『グランドクレスト戦記』を読んでいたこともあり、その世界観にすんなりと入れました。
 なんといっても登場人物たちが魅力的でしたね。個人的に傭兵団の面々は皆好きなのですが、とくにヒロインである異世界から来た(正確には違うのですが)女子高校生・真璃が良かった。いきなり右も左もわからない場所に来てしまった彼女が、その持前の前向きさで傭兵団の仲間たちと馴染んでいく姿が印象的でした。明るくてくるくると変わる表情が素敵です。無愛想なロイとの交流も良かった。
 また傭兵団の隊長であるジラファも素敵でした。どこか愛嬌のある性格も好きですが、そのどこまでも自分の流儀を通す姿がなんとも「格好いい」。
 ストーリーそのものも面白かったですね。結構シリアスな展開でもあるのに、登場人物たちの快活さがあって暗くなりすぎない、そんなお話だったかと。これからどうなっていくのか、続きが楽しみです。
 印象に残った台詞(以下反転)――「ねえ真璃、ここにとっても楽になれるお薬があるのだけれど」「楽ってなんですか! それ絶対に楽しくなるって意味じゃないでしょう!?」――傭兵団の医師リオンと真璃の掛け合い。うっかり彼女の年齢について逆鱗に触れてしまった真璃、その時のやり取りです。にこにこしながら劇薬を持って迫るリオンさんが怖い(笑)。