煉獄姫

煉獄姫 藤原祐 電撃文庫 2010年8月10日

煉獄姫 (電撃文庫)

煉獄姫 (電撃文庫)

☆☆☆☆☆☆
 この世界とは違う異世界「煉獄」。そこに満ちる大気は有害で、しかし同時に、人の意志に干渉して森羅万象へと変化する性質をもっていた。人々は「煉獄」の力を使い文明を発展させていった。瑩国第一王のアルテミシア――アルトは、その「煉獄」へ繋がる扉を身の内に孕む特異体質の少女だった。そしてその特異性ゆえに彼女は地下牢に幽閉されていた。外の世界へ出るのは、王家の命令を受けて「煉術師」として仕事をするときだけ。そして彼女は今日も少年騎士のフォグと共に、外の世界へと出るのだった。
 『ルナテッィク・ムーン』等の著者藤原祐先生による新シリーズ『煉獄姫』です。これはなかなか面白かったですね。
 アルトは存在するだけで周囲に毒を撒いてしまう特異体質の持ち主で、それゆえに彼女に触れられるのは「煉獄」の毒に抗体をもつフォグだけという状況。しかも幼いころから地下にいるために、他の人とは倫理観や価値観が違うというのが、読んでいて切ないですね。だからこそフォグやイオがそばにいるというのは、彼女にとっての大きな救いなんだろうなぁと。
 一方、煉術などの設定も面白かったですね。森羅万象へ変化する特質をもっている割と万能な力なのだけど、それを使うということは「煉獄」の毒に触れるということで、寿命を縮めることであるというのが、印象的でした。
 温かくも哀しいストーリーも面白かったので、これからの展開も楽しみです。