視ル視ルうちに好きになる

視ル視ルうちに好きになる 扇風気周 電撃文庫 2014年6月10日

☆☆☆☆☆☆
 「普通じゃないモノが見える少女が生徒の相談にのってくれる」――木島高校にはそんな噂があった。少女の名前は神崎早苗。彼女には「未来」が視えていた。放課後の教室で相談にくる生徒を待つ日々。そんな早苗のところに一人の少年がやってきた。少年の名は三島洋平。「生命」が視えるゆえに「死」におびえ、世界に絶望していた洋平。二人は出会いそして――。
 「未来」が見える少女と「生命」が見える少年が、悩みを抱える人たちのために奔走する『視ル視ルうちに好きになる』です。これはなかなか面白かったですね。
 なんといっても主役の二人が良かったです。距離感がいいというのでしょうか、甘々だけどべたべたじゃない、そんな関係が素敵です。ちょっとしたやり取りにニヤニヤします(笑)。
 ストーリーは短編形式で なかにはバトル展開のようなものもあるのだけど、個人的には日常的なお話の「芽吹きの予感」と「決まりはないはずだから」が好きですね。以下それぞれ軽く感想を。
 「芽吹きの予感」……早苗が洋平と出会う前の話。どこか無気力だった早苗が、ちょっと強引な先輩翔子と出会ったことで少しだけ影響を受ける――そんなお話。それまで触れられてなかった早苗の心情が描かれてたのが印象的でした。
 「決まりはないはずだから」……洋平と野球少年のお話。序盤の早苗とのやり取りにニヤニヤしつつ、ストーリーそのものも楽しめました。頑張る少年を見て洋平が感じた気持ちがなんともほろ苦い。とはいえ、終りかたは明るいのですっきりした気分で読めました。
 まとめ。すごく盛り上がるとか胸をつくような展開ではありませんが、ほんのり切ないような暖かいような雰囲気で最後まで楽しめました。続きがあるのなら読んでみたいです。