吸血鬼になった君は永遠の愛をはじめる

吸血鬼になった君は永遠の愛をはじめる 野村美月 ファミ通文庫2014年6月11日

☆☆☆☆☆☆
 バスケ好きの少年原田詩也。大好きなバスケの練習に明け暮れる詩也だったが、ある日を境に「人ではないもの」になってしまう。尋常ではない身体能力を得てしまったことでバスケを続けられなくなり、転校をすることになった詩也。そんな転校先で彼が出会ったのは、マリア様を思わせる綺麗な先輩で……。
 「文学少女」シリーズなどの野村美月先生による新シリーズ『吸血鬼になった君は永遠の愛を始める』です。これはなかなか面白かったですね。吸血鬼になってしまった少年と、彼と出会った少女の物語。
 まず印象的だったのは主人公である詩也ですね。彼はある日突然刺されて瀕死になったところを、赤い目をした少女に助けられてそれ以来吸血鬼になってしまうのですが、それがもたらした結果がなかなかつらい。ただただ大好きなバスケがしたかっただけなのに、人間を超えた身体能力を得てしまったことでそれが適わなくなってしまう。とくに中盤での、活躍すればするほど心が冷めていくような展開が切なかったです。
 それはそれとして。ストーリーが良かったですね。バスケができなくなりすっかり落ち込んでいた詩也が、ヒロインの綾音と出会いひょんなことから彼女のパートナーとして演劇をすることになって……という展開が面白かった。
 彼女の力になってあげたいと思いつつも、自分の「体質」や演じる役が「ドラキュラ」ということもあってなかなかうまくいかない詩也。そんな悩み多き詩也に対して、どこまでもまっすぐに向かっていく綾音が素敵です。ちょっと天然なところもあるけどまさに「マリア様」みたいな人だったかと。終盤はこの二人のやり取りにニヤニヤしっぱなしです(笑)。明るい終わり方も素敵でした。
 シリーズということで、これからどんな展開を迎えるのか、続きが楽しみです。