東京レイブンズ5

 東京レイブンズ5 あざの耕平 富士見ファンタジア文庫 2011年7月25日

☆☆☆☆☆☆
 2年に進級した春虎たちは、上級生のみで行われる実技合宿に来ていた。嵐のような新入生・鈴鹿から解放され、つかの間の自由を満喫する春虎と夏目。ところが、着いた先では当然のように鈴鹿がいて……。他、春虎たちの陰陽塾での日々を描く短編集。
 若き陰陽師たちが活躍する『東京レイブンズ』その5冊目です。なかなか面白かったですね。今回は前半が短編集で後半が本編という仕様。ほぼ短編集なので、いかそれぞれ簡単に感想を。
 「雪景、ふたり」……年があけて故郷にもどった春虎と夏目の話。短編なのにオチがひどくない(笑)。春虎の何気ない一言にわたわたする夏目が可愛いかったです。
 「ある冬の日の晩餐」……ある日春虎の部屋で鍋をしようということになって……。夏目、初めての鍋でモジモジしているところまでは可愛かったのに、だんだんとひどい事に……。最後の半ばやけっぱちになった春虎に思わず同情(笑)。
 「仁義なきしっぽ」……猫にやきもちを焼くコンが可愛いお話かと思ったら、ラストで(色々な意味で)夏目が持っていったお話でした。
 「コールド・メモリー・イン・ダーク」……他とはちょっと毛色が違ったお話。いったい春虎の過去に何があったんだ(笑)。それにしても挿絵付きの酔っぱらったコンが可愛かったです。
 本編……短編から打って変わり少しずつシリアスな要素が増えてきた感じですね。今回はとくに鈴鹿との関係改善がメインだったかと。とはいえ主に活躍していたのは京子でしたが。それにしてもラスト付近の展開はなかなかもどかしいですね。本当はものすごくシンプルにできるはずのものが、ほんの些細なことが積み重なって複雑になっている、そんな感覚です。
 これからどうなるのか、続きも楽しみです。