強くないままニューゲーム(2)

 強くないままニューゲーム2 入間人間 電撃文庫

☆☆☆☆☆☆
 ゲームはまだ始まったばかりだった。幾多のゲームオーバーの末、ついに怪獣を倒した藤と敷島。しかしそれは次のゲームの始まりだった。ほどなく新たなる敵がやってくる。それは大量の刺客を擁する「ラットマン」/血の雨を降らせる「ねずみおとこ」だった。
 突然謎のゲームに参加させられた二人の高校生の物語、『強くないままニューゲーム』その2冊目です。今回もなかなか面白かったですね。
 前回途中でゲームが分岐して、今後どういう風に展開するのだろうと思っていたら、そのまま2つのストーリーでいくみたいですね。なのでストーリーは「ラットマン」「ねずみおとこ」の2本だてです。
 「ラットマン」の方のは藤君の覚悟が問われるお話でしたね。人的被害を考えずに「ラットマン」を倒すだけなら、そこまで難しくはない。だけど、それはつまり人殺しをすることでもあり……という状況。赤の他人の被害ならいいのか、ほとんど死にかけの人ならいいのか、と色々と悩みながら最終的に藤君がとった行動は……といった展開だったかと。それはそうと相変わらずどこか緊張感のない二人の掛け合いが良かったですね。とくに敷島さんは、何気ない一言に彼女の心情が込められているようで印象的でした。
 一方の「ねずみおとこ」。「ラットマン」とはがらりと雰囲気が変わりますね。2巻からはスキルシステムが実装されて、「ラットマン」では藤君が、「ねずみおとこ」では敷島さんがスキルを使えるようになるのですが、それだけでなく二人の立ち位置も変わってますね。「ラットマン」はどちらかというと藤君がメインで、「ねずみおとこ」は敷島さんが中心といった感じかと(どちらも藤君の一人称視点ですが)。
 「ねずみおとこ」の方は前巻のラストの行動の影響か、いろいろとふっきれてしまった敷島さんが怖いですね。生き残るために、自分と藤以外を簡単に切り捨てることができる。藤君の意志すら一顧だにしないその姿は、怖くもありなにより痛々しいですね。読んでいて思わず「怪獣の時に藤君がもっと頑張っていれば」と思いました。こっちの二人のこれから関係性が気になります。
 そんな感じで今回も楽しめました。続きも楽しみです。