鮎原夜波はよく濡れる

鮎原夜波はよく濡れる 水瀬葉月

☆☆☆☆☆☆
 真夜中のプールで溺れた少年・渚野陽平。目を覚ますと、辺り一面が海に沈んだ学校の屋上にいた。そこで出会ったのは、どこかぼんやりした雰囲気の少女鮎原夜波だった。彼女とその仲間たちから、この世界のこと聞く陽平。彼女達は、水に濡れれば濡れるほど強くなる<クローク>を纏い、世界を脅かす怪物と戦っているのだった。
 『C3』『僕と魔女式アポカリプス』の著者水瀬葉月先生の新シリーズ『鮎原夜波はよく濡れる』です。これはなかなか面白かったですね。個人的には『C3』や『僕と魔女式〜』より好みでした。
 ストーリーは異世界からのやってくる水の性質を変える敵「ヴァジャノーイ」。そんな敵に、水に濡れれば濡れるほど強くなる<クローク>を纏い戦う少女たちの物語かと。
 まず登場人物たちが魅力的ですね。とくにヒロインである夜波が良かった。戦うことを優先しているあまり、一般的な常識があまりない彼女のどこかピントのずれた言動、それに振り回される陽平との掛け合いが楽しいですね。もっとも、そんなどこかずれている彼女が背負っている覚悟はなかなかに悲壮なものでした。自分のことを省みないその姿は痛々しいです。
 そしてそんな彼女を見て、覚悟を知って、陽平が取った行動が印象的でした。たしかに反則気味の行動ではあるのだけど、でも良かった。また終盤のあの活躍も素敵です。
 そういえばタイトルからも察せるけれど、要所要所で「濡れている彼女たち」をピックアップしている描写があるのにはちょっと笑った。
 まとめ。キャラクター達の掛け合いや、王道なストーリーで最後まで楽しめた作品。続きも楽しみです。
 印象に残った台詞(以下反転)――「濡れたクロークが透けるのも恥ずかしいけど……脱いだら、裸も、恥ずかしいわ」「そりゃそうだろうね! ああもう今更何言っても遅いな、とにかく早く着換えろ!」――夜波と陽平の会話です。こんな感じでちょっと変わった言動をする夜波に陽平が振り回せることがちょこちょことあって、それが結構好きだったりします(笑)。