ミス・ファーブルの蟲ノ荒園

ミス・ファーブルの蟲ノ荒園 物草純平

☆☆☆☆☆☆☆
十八世紀に発生し、またたくまに世界中へと広がった謎の巨大生物<蟲(ギヴル)>。彼らがもたらした被害と恩恵によって、世界は大きく変貌した。日本人の秋津慧太郎はフランスへの途上、何者かによる襲撃を受ける。見知らぬ海岸へと流れついた彼は、そこで蟲を愛し、その研究と対処を生業とする美少女アンリ・ファーブルと出会う。彼女の協力のもと、慧太郎は襲撃犯を探し出そうとするが……。
 謎の生物<蟲>が存在する架空の19世紀フランスを舞台に、侍の少年慧太郎と蟲好きの少女アンリが活躍する『ミス・ファーブルの蟲の荒野』です。これはとても面白かったですね。
 まず慧太郎とアンリが良かった。序盤の姉弟みたいな掛け合いも楽しくて好きですが、お互いの内心を吐露してからの信頼関係が素敵です。
 ストーリーも良かったですね。男である慧太郎が身元を隠すために女学院に入学したり、そんな慧太郎のことがちょっと気になる美少女クロエが登場したりと楽しい部分がありつつも、展開そのものは結構シビアでしたね。寄生虫型の<蟲>により変質した人<裸蟲(ミルメコレオ)>。迫害の対象である彼らと遭遇したことで、慧太郎の中で揺れる「正義」。自己嫌悪に陥り迷いながら、傷つきながら、それでも行動をしていく慧太郎の姿が印象的でした。
 色々と謎もあり、これからどのような展開があるのか続きが楽しみです。
 印象に残った台詞以下反転――「あんた、今後は女装して男にイイ顔するの禁止ね。これ以上、犠牲者を増やせないわ」「??? や、普通に意味がわからないんだけど?」「で、男の格好のときは女に優しくするの禁止っ。引っかかるのはあたしだけで十分よ」――アンリと慧太郎の掛け合いです。いや、もうアンリの言いようにニヤニヤしてました(笑)。可愛い。