笑わない科学者と時詠みの魔法使い

 笑わない科学者と時詠みの魔法使い 内堀優一 HJ文庫 2010年4月1日

笑わない科学者と時詠みの魔法使い (HJ文庫)

笑わない科学者と時詠みの魔法使い (HJ文庫)

☆☆☆☆☆☆
 つねに無表情の大学生大倉耕介。そんな彼が大学の教授から託されたのは「魔法使い」の少女・咲耶だった。最初は心を閉ざしていた咲耶だったが、耕介と共にいるうちに段々と打ち解けていく。しかし、彼女は謎の儀式「時詠みの追難」をめぐり、その命を狙われていて……。
 第3回ノベルジャパン大賞奨励賞受賞作『笑わない科学者と時詠みの魔法使い』です。これはなかなか面白かったですね。
 まず、なんといっても主人公である耕介が良かった。表情がまったく動かない無表情な人なんだけど、その内面は驚くほど柔軟で、普通なら受け入れられそうにない現象もまずは知ろうとする、そんな姿勢が印象的でした。そんなある種落ち着きのある彼と、咲耶やあすみたちとのやり取りは、なんだかまったりしていて心地のいい雰囲気だったかと。この雰囲気、好きですねー。
 また、ヒロインである咲耶も良かったですね。耕介と打ち解けてから見せる豊かな表情が素敵です。あどけないなー。
 それはそうと、ストーリーはちょっと全体的にあっさり気味だった気もします。また、これは自分の理解力の問題なのかもしれませんが、ところどころで若干読みにくく――理解しずらい部分もありました。
 とはいえ、十分に楽しめたので、これからのシリーズ展開にも期待です。