花守の竜の叙情詩

花守の竜の叙情詩(リルカ) 淡路帆希 富士見ファンタジア文庫 2009年6月25日

花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫)

花守の竜の叙情詩 (富士見ファンタジア文庫)

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 「これから、俺と君とで旅に出る。捕まれば、命はない」――隣国エッセウーナの侵攻により虜囚となった小国オクトスの王女エパーティクのもとに現れたのは、エッセウーナの第2王子テオバルドだった。彼は、願を叶える銀竜を呼び出すためにエパーティクを生煮えにするという。そして、旅を始めた2人は……。
 『紅玉のルビーウルフ』の淡路帆希先生による『花守の竜の叙情詩(リルカ)』です。祖国を失って虜囚になった少女と、少女を連れて旅にでる少年の物語。これはとても面白かったですね。
 序盤、その育った環境もあってかエパーティクは自身の身に起きた悲劇を嘆くばかり。それにいらだったテオバルドが告げた真実はなかなか辛いものがありますね。誰もが自分を慕っていると信じているだけに余計に辛い。一方で、エパーティクの言動に苛立つテオバルトですが、じゃあ彼のほうは何の問題もないかと言うと、そうでもないですね。彼もまたその環境から、偏執的といっていい状態だったかと。
 そして、そんな2人が反発を繰り返しながらも、少しずつ関係が変化していくのが良かったです。特にエレンを迎えてからの展開が印象的です。だからこそ、2人の絆が深まるほど、「生贄」という現実の前に最後にどのような結末になるのかとドキドキしながら読んでいました。
 そんな感じで、最後まで楽しめた作品でした。