手のひらに物の怪

手のひらに物の怪 耳鳴坂妖異日誌 湖山真 角川スニーカー文庫 2009年5月1日

☆☆☆☆
 ある日、草太は自分が知らないうちに、自分の名前で複数の女子にメールで告白していることを知り驚く。それは自分の携帯電話にとりついた付喪神ミコトの仕業だった。そんなミコトとの生活にも慣れたころ、ひとりの少女が現れる。その少女―刹里は、草太に「こちらと関わってはダメ」と告げて・・・。
 大11回角川学園小説大賞<奨励賞>受賞作品『手のひらに物の怪』です。普通の高校生が携帯電話にとりついたミコトとの出会いを転機に妖異と関わっていくお話かと。では、さっそく感想。これは、悪くはなかったのですが少し自分には合いませんでした。どうにも乗り切れなかったです。
 ストーリーは、普通の高校生が妖異たちを管理する耳鳴坂という組織に関わっていくというもの。割とコメディ風味(といっても後半はシリアスですが)で癖のある妖異たちがちらほらと出てきたかと。個人的には携帯電話にとりついたミコトが良かったですね。鉄鍋の妖異との騒動での行動がちょっと楽しい。
 と、それはそれとして、自分が合わないと思ったのは主人公である草太のことですね。作中でも指摘されるんですが、彼が妖異に関わる理由が「面白そうだから」というのがどうにも合わなかったです。いや、もちろんそういう理由もありだとは思うのですが、ならば、中盤くらいまでに彼の心情の変化とかが描かれていればなーとか思ったりしました。特にそういうこともなく後半にシリアスな展開になったので、どうにも乗り切れませんでした。