此よりは荒野

 此よりは荒野 水無神知宏 ガガガ文庫 2008年11月23日

Gunning for Nosferatus〈1〉此よりは荒野 (ガガガ文庫)

Gunning for Nosferatus〈1〉此よりは荒野 (ガガガ文庫)

☆☆☆☆☆☆ 
 時代は19世紀末、アメリカ西部。アラン・グリーンウッドは、何者かに家を襲われ母と妹を殺されてしまう。アランを助けた少女の話によると襲撃者は「不死者秘儀団」だという。燃える家を前にアランは復讐を誓うのだった。そして3年。キングスウェイ市で叔父のもと保安官補となっていたアランは、ある日 かつて自分を助けた少女――「屍人殺しのステラ」と再会する。自分と大してかわらぬ年齢の彼女との腕の差を感じ、アランは自嘲するのだった。

 家族を失い復讐を誓う少年アランと「屍人殺し」の異名をもつ少女ステラが繰り広げる復讐の物語『此よりは荒野』です。これはなかなか面白かったですね。ダークファンタジー×西部劇という通り、人間以外のさまざまな種族が出てくるのですが、それがいい具合に西部の雰囲気とマッチしていてなんだかしっくりくる、そんな感じの世界観だったかと。イラストもいい感じでした。
 それはそうと 主人公であるアランがよかったですね。アランはステラのように凄腕というわけではなくて、16歳の少年らしい見栄を見せたり、敵との戦いに恐怖を感じたりするごく普通の少年といえる人物。そんな彼がいろいろと失敗を重ねたり、自分の弱さに歯噛みしながらも、それでも困難に立ち向かっていく姿が格好良かったです。なんとうか、いわゆるヒーローではなく「人間」として描かれている、そんな印象を受けました。
 まとめ。どんどん話に引き込まれ、最後まで楽しめた作品。今後も続くようなので次も楽しみです。